
新しいことを始めたいと思っているのに、なかなか動けない。
資格の勉強、運動、転職活動、部屋の片づけ。やった方がいいと分かっていても、始める前にあれこれ考えてしまいます。
失敗したらどうしよう。続かなかったら恥ずかしい。もっと準備してからの方がいい。
そうして、始める前の時間だけが、どんどん長くなっていきます。
なぜ、最初の一歩だけが、こんなに重いのでしょうか。
始める前は、未来が広がりすぎている
始める前の頭の中には、いろいろな未来があります。
うまくいく未来も、失敗する未来もある。途中でやめるかもしれないし、思った以上に成果が出るかもしれない。
まだ何も決まっていないので、自由です。でも、自由だからこそ、どちらへ進めばいいのか分からなくなります。
一歩踏み出せば、現実が動き出します。動き出すまでは、何通りもの未来を、頭の中で好きなだけ比べていられます。その居心地のよさが、足を止めてしまうことがあります。
最初の一歩が怖いのは、弱いからではない
始める前に不安になるのは、意志が弱いからではありません。
始めたとたん、結果が見えてくるからです。できなかったこと、向いていなかったこと、思ったより小さな成果しか出なかったこと。そういうことも、分かってしまいます。
何も始めなければ、「本気を出せばできる」と思い続けられます。でもそれは、可能性を使わないまま、しまっておくだけの状態でもあります。
「始める」力は、もともと持っている?
ここで、見方を少し変えてみます。
誰かに声をかける。新しい仕事に応募する。机に教材を出す。そのとき、昨日まで世界になかった出来事が、一つ生まれています。
人は、環境や過去の経験に影響されます。それでも、すべてが決められているわけではありません。新しいことを始める力を、もともと持っているのです。
この考えに「出生性」という名前をつけたのが、20世紀の哲学者、ハンナ・アーレントです。人は生まれるたびに、世界に新しい「始まり」を持ち込む。だから人は、始める力を持った存在だ、という考え方です。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するにこういうことです。アーレントの考え方を借りると、始めるとは、準備が完璧に整ってから動くことではありません。まだ何も決まっていないところに、新しいことを一つ置いてみることです。
始めれば解決、というわけではない
もちろん、始めさえすれば必ずうまくいく、という話ではありません。始めてみて、合わないと分かることもあります。
それは失敗ではなく、動いたからこそ手に入った情報です。頭の中で考え続けているだけでは、分からなかったことです。
最初の一歩を軽くする、いくつかの方法
方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。
- 行動を小さくする。 勉強なら教材を机に出すだけ、運動なら靴を履くだけ。「始める」のハードルを、できるだけ下げます。
- 期間を決めて、お試しにする。 「1週間だけやって、合わなければやめる」と決めておくと、失敗の重みが軽くなります。
- 重要でなければ、やらないと決める。 ずっと動けないのは、本当はそこまでやりたいことではないからかもしれません。そう気づいたなら、やらないと決めて、頭の中の荷物を一つ下ろしていいのです。
一度始まれば、頭の中でふくらんでいた不安は、目の前の具体的な作業に変わります。
最初の一歩は、ゴールに近づくためだけのものではありません。頭の中の「かもしれない」を、現実の「やってみた」に変える一歩でもあります。
あなたがいま、ためらっていることは何でしょうか。失敗が怖いのか、それとも、実はそこまでやりたいことではないのか。
tetsubiteとは?
隙間時間に、ちょっと賢く。「そうなんだ」を。
電車の行き帰り、昼休み、寝る前。
毎日のちょっとした隙間時間に、気軽に読める「へぇ」をお届けするブログです。
「なぜ人は○○するんだろう?」
「そういえば、これってどういうこと?」
そんな身近な疑問や、意外と知らない雑学を入り口に、哲学や心理学、歴史など、少し深く考えると面白い話をご紹介します。
難しい本を読むほどではないけれど、
「そうなんだ!」と、ひとつ新しいことを知りたい。
そんなあなたの隙間時間に、ちょっとした知識と「なるほど」を。
読み終わったあと、誰かにちょっと話したくなる。
そんな記事をお届けします。


コメント