なぜ、ただの挨拶なのに、されないと気になってしまうのか?

本日のモヤモヤ

職場ですれ違ったときの「お疲れさまです」。何かをしてもらったときの「ありがとうございます」。

毎日のように使っている言葉ですが、そのたびに、心から感謝したり、ねぎらったりしているかというと、そうでもありません。

  • いつも挨拶してくれる人が、何も言わずに通り過ぎると、少し気になる
  • あまり親しくない人でも、きちんと挨拶してくれると、悪い気はしない

言葉そのものに、特別な意味はないはずです。なぜ、ただの挨拶なのに、されないと気になってしまうのでしょうか。

気持ちがあれば、形はいらないはず?

相手を大切に思っているなら、決まった言葉を使わなくても、気持ちは伝わりそうです。

でも、実際はそうでもありません。朝、同僚が何も言わずに席に座ったとします。本当は少し眠いだけで、悪気はないとしても、こちらは「何かあったのかな」「怒っているのかな」と考えてしまいます。

目に見えない気持ちは、形にしないと、相手に届きません。「おはようございます」の一言は、「あなたに気づいています」「敵ではありません」という合図の役目をしています。しかも、挨拶は、ほんの数秒でできます。数秒の形が、そのあとの気まずさを防いでくれることもあります。

反対に、書類を渡したのに、何も言わずに受け取られると、「ちゃんと届いたのかな」「迷惑だったかな」と不安になります。

もし、挨拶が一日中ない職場を想像してみてください。誰も気持ちを悪くしていなくても、なんとなく、息苦しい場所になりそうです。

つまり、私たちは、挨拶という形を通して、相手との関係を確かめているのです。

形が、気持ちを育てることもある

「挨拶は、ただの飾りなのだろうか。それとも、人と人をつなぐ土台なのだろうか」。この問いを、2500年ほど前の中国で考え続けた人がいます。思想家の孔子です。

孔子が大切にした「礼」は、挨拶や作法のように、人と関わるときの形のことです。会ったらおじぎをする、物を渡すときは両手で渡す、といった、日々の小さなふるまいも含まれます。孔子は、この形を整えることが、人と人との関係を支えると考えました。

たとえば、最初は義務感で挨拶していても、毎日続けるうちに、相手の顔を見て声をかけるようになります。挨拶がきっかけで会話が生まれ、相手の様子にも気づきやすくなります。形から入っても、気持ちが、あとからついてくることがあるのです。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、形は気持ちの入れ物であるだけでなく、気持ちを育てるきっかけにもなる、ということです。

孔子の考え方を借りると、挨拶がないと気になるのは、挨拶が「あなたを大切にしています」という、目に見える合図になっているからだといえます。

挨拶さえしていれば、いいわけではない

ただし、ここは孔子の考え方を、日常にかなり簡単に借りた話です。挨拶さえしていれば大切にしていることになるわけではなく、笑顔で挨拶しても、話を無視したり、約束を破ったりすれば、信頼は失われます。孔子自身も、形だけで中身がともなわないことは、よしとしなかったとされています。

日常の礼儀と、うまくつきあう方法

方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。

  • 小さな挨拶を省略しない。 すれ違いの一言や、手伝ってもらったときのお礼は、関係を保つきっかけになります。たとえば、朝のメールの一行目に「おはようございます」と入れるだけでも、受け取る側の印象は変わります。
  • ひとこと具体的にする。 「ありがとうございます」に、「資料をまとめてくれて助かりました」を足すと、気持ちが伝わりやすくなります。名前を呼ぶだけでも、「あなたに向けて言っています」という形になります。
  • 形と中身を、両方そろえる。 丁寧な言葉を使いながら、話を聞く、約束を守る。言葉と行動が合っていると、挨拶も、ちゃんと届きます。忙しいときは、目を見てうなずくだけでも、「聞いています」という形になります。
  • 重要でなければ、挨拶にこだわりすぎないと決める。 挨拶を返してもらえなくても、「忙しかったのかも」と流して大丈夫です。相手にも、その日の事情があります。

毎回その場で接し方を考えなくても、挨拶やお礼という共通の形があれば、関係を始めたり、保ったりしやすくなります。毎日の挨拶は、それだけで十分ではありませんが、関係を支える小さな土台です。

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