友達から、誕生日プレゼントをもらった。自分のことを考えて選んでくれたのが、嬉しい。
ところが、喜んでいるうちに、こんな考えが浮かびます。
- 自分の誕生日には、何を返そう?
- 同じくらいの値段のほうがいいかな?
「ありがとう」と言ったあとで、頭の中では、もう計算を始めているのです。
嬉しいはずなのに、少しプレッシャーを感じる。職場のお菓子や、旅行のお土産でも、同じことが起きます。相手は気軽に渡しただけかもしれないのに、こちらは「何か返さなきゃ」と思ってしまう。
なぜ、贈り物をもらうと、嬉しさと一緒に「返さなきゃ」まで生まれるのでしょうか。
プレゼントは、物だけではない
贈り物からは、物だけでなく、「自分のことを考えてくれた」という気持ちも受け取っています。だから嬉しい。贈り物は、「あなたを大切に思っています」という気持ちを、形にして届ける方法でもあります。職場のお菓子のような、ささやかなものなら、「ありがとう」の一言が、そのままお返しになることも多いものです。
その気持ちを受け取ったからこそ、「自分も相手を大切にしたい」と思って、何かを返したくなります。それは、自然な気持ちです。
一方で、「返さないと失礼かも」という不安が、理由になることもあります。嬉しい気持ちと、不安な気持ちが、同時に動いているのです。逆に、自分が贈る側のときも、お返しを期待しているわけではないのに、何も返ってこないと、少し気になることがあります。
贈り物は、人とのつながりを動かす
「もらったら返したくなる」。この気持ちを、社会の中の贈り物のやりとりから調べた人がいます。20世紀のフランスの人類学者、マルセル・モースです。
モースは、世界のさまざまな社会で、贈り物がどう交わされているかを調べました。そして、贈り物のやりとりには、「贈る」「受け取る」「返す」という流れがあることに目をつけました。
この流れが、人と人との関係をつくり、続けていく働きをしている、という見方です。贈り物は、一度渡して終わりではありません。次の誕生日、次のお土産と、やりとりが続いていくからこそ、関係も続いていきます。
たとえば、年賀状や、お中元を思い浮かべてください。品物そのものより、「あなたのことを忘れていません」という合図を、やりとりしています。お返しの品を選ぶ時間も、相手を思い浮かべる時間です。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、贈り物は物を渡すだけでなく、人とのつながりを動かすものでもある、ということです。
モースの考え方を借りると、「返さなきゃ」と感じるのは、つながりを続けたい気持ちが、働いているからだといえます。
すべてのプレゼントに、お返しの義務があるわけではない
ただ、モースが論じたのは、さまざまな社会や文化の中の贈り物の話で、ここでは日常に借りています。すべてのプレゼントに、お返しの義務があるわけではありません。
小さなお土産や差し入れに、毎回、同じ価値で返す必要もありません。
もちろん、地域や職場によっては、お返しが大切な場合もあります。相手や状況に合わせてください。お返しをしないと決めた場合でも、感謝を言葉で伝えることは、できます。
お返しのプレッシャーと、うまくつきあう方法
方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。
- まず、嬉しさを伝える。 「選んでくれてありがとう」だけでも、気持ちを受け取ったことは伝わります。「あの色、好みだった」のように、具体的な一言を添えると、より気持ちが伝わります。
- 値段をそろえようとしない。 同じ金額で返す必要はありません。気持ちが伝われば、金額は同じでなくていいのです。
- 返し方を選ぶ。 次に会ったときにお菓子を渡す、困っているときに手を貸すなど、感謝の伝え方はいろいろあります。相手の好きなものを一つ思い出して、小さなものを選ぶのも、一つです。
- 重要でなければ、貸し借りをそろえないと決める。 毎回ぴったり返そうとしなくて大丈夫です。「今度、お茶でもおごるね」くらいの、軽い一言で十分なこともあります。
贈り物をもらったら、まずは、その嬉しさを味わってみる。お返しを考えるのは、それからでも遅くありません。お返しは、義務としてではなく、「これからも仲よくしたい」という気持ちの形として、選んでいいのです。
tetsubiteとは?
隙間時間に、ちょっと賢く。「そうなんだ」を。
電車の行き帰り、昼休み、寝る前。
毎日のちょっとした隙間時間に、気軽に読める「へぇ」をお届けするブログです。
「なぜ人は○○するんだろう?」
「そういえば、これってどういうこと?」
そんな身近な疑問や、意外と知らない雑学を入り口に、哲学や心理学、歴史など、少し深く考えると面白い話をご紹介します。
難しい本を読むほどではないけれど、
「そうなんだ!」と、ひとつ新しいことを知りたい。
そんなあなたの隙間時間に、ちょっとした知識と「なるほど」を。
読み終わったあと、誰かにちょっと話したくなる。
そんな記事をお届けします。


コメント