なぜ、一度『行く』と言うと、あとから断りにくいのか?

本日のモヤモヤ

友達から「来週の土曜日、一緒に行かない?」と誘われて、その場で「いいよ!」と答える。

ところが、帰ってから予定表を見ると、朝から予定が入っている。場所も遠い。正直、家で休みたい。

それでも、一度「行く」と言ったから、断りにくい。友達の顔を思い浮かべるほど、言い出しにくくなります。「やっぱりやめようかな」と思っただけで、少し罪悪感が出てきます。

なぜ、「一度言ったから守らなきゃ」と思ってしまうのでしょうか。

「行きたい」と「約束した」は、別のこと

予定を決める前は、「土曜日、どうしようかな」と自由に考えられます。行きたいか、休みたいか、自分の気持ちだけで決められます。このときは、「行かない」を選んでも、誰にも何も言う必要がありません。

でも、「行く」と言ったあとは、「自分がどうしたいか」だけでは決められません。「自分で言ったことには、責任がある」という感覚が加わるからです。言葉にした瞬間、気持ちは、約束に変わります。断るには、「やっぱりやめる」と、相手に伝える一手間が必要になります。

約束は、相手の予定にもなる

自分が「行く」と言った瞬間、相手はその言葉を前提に、予定を組むかもしれません。お店を予約する。ほかの誘いを断る。その日を空けて待つ。

断れば、相手にも予定変更が起きます。「面倒だからやめたい」だけでは終わらないのは、そのためです。あなたが誘った側だったら、「いいよ」と返事をもらったあとで、「やっぱり行けない」と言われると、少し残念ですよね。

約束は、信頼でできている

この「約束の重さ」を、人と人との信頼の問題として考えた哲学者がいます。18世紀のドイツの哲学者、カントです。

カントは、最初から守る気のない約束を、問題だと考えました。有名な例は、返すつもりがないのに、「返すから」と言ってお金を借りることです。もし、誰もがそうするようになったら、誰も人にお金を貸さなくなり、約束の言葉は、誰にも信じてもらえなくなります。そうなると、「約束」という仕組み自体が、成り立たなくなるからです。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、約束は、「この人は言ったことを守る」という信頼があるから、意味を持つ、ということです。守ってもらえると分かっているから、人は安心して、相手の言葉を前提に動けます。

カントの考え方を借りると、「行く」と言ったあとに断りにくいのは、自分の言葉への信頼を守りたい気持ちが、働くからだといえます。

約束は、何があっても守らなければいけないわけではない

ただし、ここはカントの考え方を、かなり簡単にして日常に借りた話です。カントが問題にしたのは、最初から守る気のなかった約束です。「一度言ったことは、何があっても守る」という意味ではありません。

体調が悪くなる日も、仕事が入る日もあります。また、「今度ご飯行こうね」という軽い声かけと、仕事の正式な約束では、重さも違います。事情が変わったら、早めに伝えて相談すれば大丈夫です。どうしても行けないのに、無理をして行くと、当日、楽しめなくなって、それも相手に伝わってしまいます。

約束と、うまくつきあう方法

方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。

  • その場で即答しない。 「予定を確認して返事するね」と、一度持ち帰ります。すぐに返事をしないのは、冷たいことではありません。
  • 変わったら、早めに短く伝える。 黙って先延ばしせず、予定が分かった時点で相談します。「ごめん、その日は難しそう。来週ならどう?」のように、代わりの案を添えると、角が立ちにくくなります。
  • 約束の重さを分ける。 「絶対に行く」約束と、「行けたら行く」くらいの約束を、自分の中で分けておきます。「行けたら行く」と先に伝えておけば、あとから断るときも、気が楽になります。
  • 重要でなければ、約束にしないと決める。 「たぶん行ける」「また連絡する」まで、無理に確定させなくていいのです。

約束を守ることは、自分を縛ることだけではありません。自分の言葉を、相手が安心して信じられるものにしておくことでもあります。

断ることは、約束を軽く見ることではありません。相手との関係を、これからも続けるための、一つの方法でもあります。

「いいよ」と答える前に、本当に引き受けられるか、一度だけ考えてみませんか。

tetsubiteとは?

隙間時間に、ちょっと賢く。「そうなんだ」を。

電車の行き帰り、昼休み、寝る前。
毎日のちょっとした隙間時間に、気軽に読める「へぇ」をお届けするブログです。

「なぜ人は○○するんだろう?」
「そういえば、これってどういうこと?」

そんな身近な疑問や、意外と知らない雑学を入り口に、哲学や心理学、歴史など、少し深く考えると面白い話をご紹介します。

難しい本を読むほどではないけれど、
「そうなんだ!」と、ひとつ新しいことを知りたい。
そんなあなたの隙間時間に、ちょっとした知識と「なるほど」を。

読み終わったあと、誰かにちょっと話したくなる。
そんな記事をお届けします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました