こんな経験はないでしょうか。
- 新しい企画を提案したけれど、思うような成果が出なかった
- 振り返ると、「そもそも、進めるべきではなかったのかも」と思えてくる
- 同じ情報で決めた企画が成功していたら、「あのとき挑戦してよかった」と思うはず
判断した理由も、持っていた情報も、同じなのに。なぜ、結果が悪いと、あのときの判断まで間違いに思えるのでしょうか。
結果を知ると、当時の自分が見えなくなる
結果を知ったあとだと、当時は見えなかった兆候まで、見えてきます。「あの数字は気になっていた」「もっと慎重になるべきだった」と考えてしまいます。その考えは、結果を知っているからこそ、浮かぶものです。
でも、当時の自分は、未来を知りませんでした。その時点の情報で、考えられる範囲で決めていたはずです。それなのに、結果を知った目で、当時の自分に点数をつけてしまいます。こうした見方は、「結果論」と呼ばれます。
たとえば、降水確率30%の予報を見て、傘を持たずに出かけたとします。雨が降らなければ、「持たなくて正解」と思います。雨が降れば、「持っていけばよかった」と思います。どちらの日も、30%という情報で決めた判断は、同じなのに。
仕事なら、こうなります。新商品の発売を決めるとき、市場を調べて、上司にも相談して、その時点でできる準備はしました。ところが、発売直後に、予想もしなかった事情で売れ行きが落ちます。すると、会議で、「そもそも、あの調査が甘かったのでは」という声が出てきます。
同じ注意でも、結果は変わる
同じように注意して運転している、二人がいたとします。一人は無事に着き、もう一人は、予測できない出来事で事故にあいました。
結果だけを見れば、周りの評価は大きく変わります。でも、二人の注意深さまで、違っていたとは限りません。事故にあった人は、「自分の運転が悪かったのではないか」と、何度も考えてしまうかもしれません。
結果には、「運」が混ざっている
こうした、本人の力ではどうにもならない「運」が、評価や責任の感じ方に入り込む。この「運」の問題に、正面から向き合った哲学者がいます。20世紀のイギリスの哲学者、バーナード・ウィリアムズです。
ウィリアムズは、この問題を「道徳的運」という名前で考えました。人の行いを「よかった」「悪かった」と考えるとき、本人の力ではどうにもならない運が、どうしても混ざってしまう、ということです。ウィリアムズは、本人に落ち度がなくても、「あのとき違うことをしていれば」と悔やんでしまう気持ちにも、目を向けました。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、結果は、自分の判断だけで決まるわけではない、ということです。
ウィリアムズの考え方を借りると、失敗したときに判断まで間違いに思えるのは、結果に混ざった運まで、自分の判断のせいとして数えてしまうからだといえます。
全部、運のせいにしていいの?
ただし、ここはウィリアムズの議論を、日常にかなり簡単に借りた話です。結果が悪いとき、責任を全部運のせいにしていいわけではありません。予測できた危険を無視していたなら、振り返る必要があります。
失敗した判断と、うまくつきあう方法
方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。
- 当時の情報を振り返る。 そのとき何を知っていて、何を知らなかったかを、書き出して整理します。「競合の動きは知らなかった」「予算の上限は決まっていた」のように並べると、当時の自分の立場が見えてきます。
- 判断と結果を分ける。 結果が悪くても、判断の手順はよかったかもしれません。反対に、うまくいっても、たまたまだったなら、判断がよかったとは限りません。「情報を集めたか」「ほかの選択肢を考えたか」など、手順だけを見てみます。
- 変えられた部分を探す。 準備不足や確認漏れは、次に直します。自分では防げなかったことまで、背負わなくて大丈夫です。たとえば、「発売前の確認を一つ増やす」のように、次にできる行動の形にします。
- 重要でなければ、何度も振り返らないと決める。 影響の小さい失敗は、次に生かせる点を一つだけ確認したら、そこで区切ります。「この失敗から学べるのは、これだけ」と、ひとことメモして閉じるのも、一つの手です。
原因を分析することと、自分を責め続けることは、別です。失敗したことと、判断が間違っていたことは、同じではありません。
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