なぜ「自分らしく」と言われるほど、自分がわからなくなるのか?

本日のモヤモヤ

「自分らしく生きよう」と言われると、前向きな気持ちになることがあります。

けれど、いざ自分らしさを考えてみると、急に難しくなります。

  • 好きな仕事を選ぶべきなのか
  • 周囲に合わせず、思ったことを言うべきなのか
  • 昔から変わらない性格を守ることなのか

考えれば考えるほど、「自分らしさ」が遠ざかっていくことがあります。

なぜ、「自分らしく」と言われるほど、自分がわからなくなるのでしょうか。

場面によって違う顔は、偽物ではない

職場では慎重なのに、友人といるとよく話す人がいます。家では何もしたくないのに、旅行の計画になると急に行動的になる人もいます。

このとき、「本当の自分はどれなのか」と考えたくなります。けれど、どちらか一方だけが本物とは限りません。場面によって違う顔を見せるのは、偽物だからではなく、どれもその人の一部だからです。

「本当の自分」を探し続けると、動けなくなる

自分らしくありたいと思うほど、こんな問いが浮かびます。

  • これは本当に自分が望んだことだろうか
  • 周りに流されているだけではないか
  • もっと自分に合う生き方があるのではないか

そうやって、決める前に「正しい自分」を探し始めてしまいます。

でも、選ぶ前から、完成した自分が見つかるとは限りません。何かを選んで、経験して、「違うな」「これだな」と感じるうちに、自分が少しずつ見えてくることもあります。

配られた手札は、選べない。でも、切り方は選べる

「自分らしさは最初から決まっている」でも、「何でも自由に決められる」でもない。その間に答えを探した哲学者がいます。20世紀のフランスの哲学者、シモーヌ・ド・ボーヴォワールです。

人には、自分では選べない条件があります。育った場所、性別、家庭、時代、体力、お金の事情など。トランプにたとえるなら、最初に配られた手札のようなものです。

でも、その手札をどう切るかは、自分で選べます。何を引き受けて、どこで方向を変えるか。そこには、自分の選択が関わってきます。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、自分らしさは、心の奥に眠っている完成品ではありません。与えられた状況の中で選び続けるうちに、少しずつできあがっていくものです。

「いつも同じ自分」を守らなくていい

自分らしくあろうとすると、つい「いつも同じ自分」を守りたくなります。昔から好きだったものを好きでい続ける。一度決めた進路を変えない。周りから見たイメージを壊さない。

でも、昨日の自分と今日の自分が少し違っていても、それは裏切りではありません。以前は安定を求めていたけれど、今は挑戦してみたい。昔は人に合わせるのが楽だったけれど、今は自分の意見を伝えたい。そんな変化を、「自分らしくない」と切り捨てなくていいのです。

ボーヴォワールの考え方を借りると、自分らしさとは「変わらない性格」ではなく、「いまの条件を知ったうえで、どう生きるかを選ぶこと」だといえます。

「選べばいい」で、片づく話ではない

ただし、「選べるのだから、うまくいかないのは自分のせい」という話ではありません。手札があまりに厳しい場合や、選べる範囲がとても狭い状況もあります。

そんなときは、自分を責めなくて大丈夫です。選べる部分が小さくても、そこから探していいのです。

「自分らしく」に苦しくなったときの、いくつかの方法

方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。

  • 問いを変える。 「本当の自分はどれか」ではなく、「いまの自分は、どんな条件の中で、何を選ぼうとしているのか」と考えてみます。
  • 小さく選んで、確かめる。 「今週だけ、この意見を言ってみる」「一か月だけ、この習い事を試す」。しっくりきたかどうかが、答えの手がかりになります。
  • 重要でなければ、自分らしさを考えないと決める。 今日の夕食を決めるだけなら、「自分らしさ」まで持ち出さなくていいのです。「自分らしさ」を深く考えなくても、毎日は暮らせます。

自分は、見つけるものではありません。選びながら、少しずつ見えてくるものです。

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