なぜ、感情を抑え込もうとするほど、余計に腹が立つのか?

本日のモヤモヤ

嫌なことがあって、ずっとイライラしている。「こんなことで怒るのはよくない」と思うほど、余計に腹が立ってくる。

  • 忘れようとしても、同じ場面が何度も頭の中で再生される
  • 気持ちを思いどおりにできない自分に、さらに疲れてしまう

なぜ、感情を抑え込もうとするほど、余計に腹が立つのでしょうか。

抑え込むと、二重にしんどくなる

同僚に嫌な言い方をされたとします。「気にしないようにしよう」と思っても、言葉が頭から離れない。

無理に押さえると、腹立たしさに加えて、「いつまでも気にしている自分」にもイライラします。つらさが、二重になるのです。上司に理不尽なことを言われても、その場では笑顔でやり過ごした。帰り道、ふと思い出して、また腹が立つ。そんな経験もあるかもしれません。

眠れない夜に、「早く寝なきゃ」と焦るほど、目がさえてしまうことがあります。感情も同じで、「消さなきゃ」と力を入れるほど、そのことばかり考えてしまいます。

押さえ込んだ気持ちは、なくなるわけではありません。ふとしたときに、別の形で顔を出すことがあります。たとえば、家に帰ってから、家族の小さな一言に、強く言い返してしまう。

腹が立つ理由は、一つとは限らない

同僚に嫌な言い方をされたとき、腹が立った理由は、いくつか考えられます。

  • 人前で恥をかかされた気がした
  • 努力を認めてもらえなかった
  • 軽く扱われた気がした
  • 前にも似たことがあり、思い出した

表に出ているのは「怒り」でも、奥に別の気持ちがあることがあります。同じ出来事でも、日によって、腹が立つ度合いが違うことがあります。疲れていたり、別の心配ごとがあったりすると、小さなことが引き金になるのです。

理由が分かると、少し扱いやすくなる

「感情は、気合いで消すもの」と思いがちですが、感情が生まれた理由を知ることで、扱いやすくなると考えた哲学者がいます。17世紀のオランダの哲学者、バールーフ・スピノザです。スピノザは、レンズを磨く仕事をしながら、哲学を書き続けた人です。

スピノザは、人の感情を、自然の現象のように、冷静に観察しようとしました。主著『エチカ』では、怒りや喜びが、どんな理由で生まれるのかを、順番に説明しています。そして、感情は、その理由がはっきり分かると、振り回される度合いが小さくなる、と考えました。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、感情を消そうとするのではなく、「自分は何に反応しているのか」を知る、ということです。たとえば、「軽く扱われた気がした」と気づけば、怒りの正体は、相手の態度そのものより、「大切にされたい」という気持ちだった、と分かります。

スピノザの考え方を借りると、抑え込むほど腹が立つのは、理由が分からないまま、感情だけを押さえようとして、かえって感情に振り回されてしまうからだといえます。

理由が分かれば、怒りは消える?

ただし、ここはスピノザの考え方を、日常にかなり簡単に借りた話です。理由が分かっても、すぐに怒りが消えるわけではありません。相手の言動に問題があるなら、距離を取ったり、伝えたりすることも必要です。

感情と、うまくつきあう方法

方法は一つではありません。合いそうなものを選んでみてください。

  • 理由を一つ探す。 「自分は、何に反応しているのだろう」と、書き出してみます。「返事を無視された」→「軽く扱われた気がした」と、一歩ずつ掘り下げてみます。紙でもスマホのメモでも、一行で大丈夫です。
  • 起きたことと、解釈を分ける。 「返事がなかった」は事実。「嫌われている」は、自分の解釈かもしれません。
  • 返信や判断を、少し後に回す。 気持ちが強く動いているときは、結論を急ぎません。一晩置くだけで、見え方が変わることもあります。メールやチャットは、下書きに残して、翌日読み直します。
  • 重要でなければ、理由を探さないと決める。 小さなイライラまで、毎回分析しなくていいのです。時間が流してくれることもあります。水を飲む、席を立つ、といった小さな切り替えで、やり過ごしても大丈夫です。

感情は、望むタイミングで消えてはくれません。でも、理由が見えれば、感情に押されるまま動く以外の道が見えてきます。

次にイライラしたとき、追い払う前に、一度だけ聞いてみたら、何が見えてくるでしょうか。「自分は、何に反応しているのだろう」と。

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